2013年10月04日
昨日のカープ 前田智徳選手
広島・前田智徳さん(42)「プロは結果がすべて。志は高かった」
■広島東洋カープ・外野手(まえだ・とものり)
広島ひと筋24年、通算7785打席目で現役に終止符を打った。
引退試合での八回2死、今季最多の観衆が見守るなか、希代の天才打者の最終打席は投ゴロ。九回には5年ぶり、新球場では初の右翼守備に就き何度もファウルを懸命に追った。「ゴロを打って走るのは避けたい。守備は不可能」と言ったはずが、どちらも結果は逆。「願うことがかなったことがない」と苦笑した。
平成2年、熊本工高からドラフト4位で広島入り。走攻守の三拍子がそろったプレーは名だたる選手らをも魅了した。
だが、人生は度重なるけがとの闘いだった。2度のアキレス腱(けん)断裂。ある年の暮れの夜、球団関係者が仕事納めの後に廿日市市の屋内総合練習場をのぞくと、真っ暗な中でひとりリハビリトレーニングに励んでいた。英美夫人は「オフも課題が多く、休みもリハビリや治療。でも、頑張る姿に家族も心打たれた」と振り返る。約20年間、患部に使ったテーピングの量は1日約10メートルにもおよぶ。
「24年間で野球をやっていない時間が多かった。ほとんどがリハビリとトレーニング。でも、やらないと結果は出ない」
けがと真剣に向き合い、練習に精魂傾けた姿勢は勲章をもたらした。19年に通算2千安打を達成。しかし、当時建設中だったマツダスタジアムを見て「オレがそこで野球しとったら失礼やろ」とも言った。それから6年。「故障だらけの人生でしたが、広島で、カープで、いちずに野球できたことを誇りに思う」。この日もバットを振れる状態でなかった。だが、穏やかな笑みを浮かべ静かに球場を去った。(嶋田知加子)
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広島3-5中日 雄太が今季初勝利
中日は二回に堂上直の犠飛で先制。三回は5安打で3点、四回には田中のプロ初本塁打のソロで加点した。小刻みな継投でリードを守り、雄太が今季初勝利。広島は12年連続のシーズン負け越しが決定。福井が三回途中で降板の乱調。
◇セ・リーグ
広島-中日最終戦(広島13勝11敗、18時、マツダスタジアム、32217人)
中 日013100000-5
広 島002100000-3
▽勝 雄太3試合1勝
▽S 岡田65試合7勝5敗2S
▽敗 福井12試合2敗
▽本塁打 菊池11号(2)(小川)田中1号(1)(中田)
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2013年10月04日
今日のコラム
10月4日松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM)
心を磨く
人間の心というものは、ほんとうに自由自在なものだと思います。何か困難な問題が起こったとしても、心の働きによっていかようにでも考えられると思うのです。もう辛抱できない、あしたにでも自殺したいという場合でも、考え方を変えるならば、一転して、あたかもひろびろとした大海をゆくがごとき悠々とした心境に転回することさえできるのです。それが人間の心の働きというものでしょう。
ですからわれわれは、これから仕事をするに当たって、まず心を磨くというか、ものの考え方を成長させる必要があります。そういう心の働きに、今まで得た知識を加えてやっていけば、必ず大きな成果が生まれると思います。
2013年10月3日筆洗(東京新聞TOKYOWeb)
筆洗
▼犬も歩けば棒に当たる。江戸いろはカルタの「い」でおなじみだが、江戸の昔は歩きも歩いたり、遠方から伊勢参りを果たし、大金を授けられた犬がいたそうだ
▼おとぎ話のようだが、実話というから驚きだ。元毎日映画社社長の仁科邦男さんの労作『犬の伊勢参り』(平凡社新書)によると、その珍事は、明和六年(一七六九年)の式年遷宮に触発され始まったおかげ参りの最中に起きた
▼上方から来たという犬が外宮の手水(ちょうず)場で水を飲み、宮前で平伏した。犬は不浄として出入りを禁じられているが、宮人がその姿に感じ入り、首に御祓(おはらい)をくくりつけてやると、内宮にもお参りしたそうだ
▼この犬だけではない。伊勢参りの犬を記録する宿場間の引き継ぎ書が、かなり残されている。文書には道中で授けられた銭の額まで記され、それが増え続け、犬の首に付けられぬほどの大金になったという
▼今は犬が勝手に歩くのもままならぬが、江戸の犬は、自由だった。そして犬は実に人の気持ちに敏感だ。伊勢へという人々の思いと流れに乗った犬が「お参りの犬」と大切に扱われるうちに、ついに参拝を果たしたのではないかと仁科さんはみる
▼きのうは内宮の遷御の儀、五日は外宮の遷御。式年遷宮をことほぐ参拝の列に、さすがに犬の姿は見えぬだろうが、かつて犬までを伊勢に導いた信仰の熱は今も昔も変わらない。
2013年10月4日天声人語(OCN*朝日新聞デジタル)
天声人語
▼スピーチをするときは原稿をつくり、極力覚えてから会に臨む。作家の故丸谷才一さんの流儀だった。失言を防ぐためでもあるが、なにより集った人々とともに「一夕(いっせき)の歓(かん)を盡(つく)す」ことを大切にしたのだ
▼スピーチを文学にしたと評された。その作品を収録した『合本(がっぽん) 挨拶(あいさつ)はたいへんだ』に、「十四番目に」という小品がある。ある文学賞を受けて謝辞を述べるのだが、丸谷さんの前に13人も話す。聴衆はへとへとだろうからと、うんと短くした。文庫版で6行。これも原稿をつくった
▼人前で話すということに関心が集まっている。五輪招致の時のプレゼンは今も話題だ。自己表現の力が試される時代である。季刊誌「考える人」の最新号は「人を動かすスピーチ」の特集。ネット全盛の時代だからこそ血の通った言葉が求められている。そんな着眼という
▼チャーチル、ケネディの歴史的演説からスーパーの社長の朝礼まで題材は幅広い。日本の「生ぬるいスピーチ文化」を特集は憂う。往々、長くて退屈なあいさつがまかり通る。「とりわけ政治の言葉をもっと磨いてほしい」と河野通和(みちかず)編集長
▼確かに名演説というものを久しく聴かない。公式の場では官僚の作文を棒読みする。内輪の会合では気が緩み放言する。外交史家の細谷雄一さんが特集の中で鋭く指摘している。失言の多い政治家とは知性の足りない人なのだ、と
▼丸谷さんは常に精魂込めてスピーチをした。作家の知性には及びもつかないが、その姿勢は学びたい。
※朝日新聞休刊日は更新されません
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