2013年09月24日
今日のコラム
9月24日松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM)
人に尋ねる
自分の才能に向くような仕事を自分で考えて進んでいくことか非常に大事だと思う。ところか、自分の才能というものは、自分ではなかなかわからない。そのときには自分の信頼する人の言葉を聞くとよい。しかし素直な気持で聞かないと、先輩の正しい言葉が正しく自分の耳に入らない。
私も、自分でわからないことは、素直な心持になって先輩に尋ねることにしている。そして静かに考えていけば、必ず行く道は自然に決まってきて、希望が持てると思う。しかし、野心とか欲望とかいうものを強く持つと、そこに無理が生じ迷いが起こってくるような気がするのである。
筆洗
2013年9月23日筆洗(東京新聞TOKYOWeb)
▼雑誌「暮しの手帖」の名物編集長だった花森安治さんは「民主主義の<民>は 庶民の民だ/ぼくらの暮しを なによりも第一にする ということだ」と書き残している
▼暮らしと企業の利益がぶつかったら。答えは明快だ。「企業を倒す ということだ/ぼくらの暮しと 政府の考え方が ぶつかったら/政府を倒す ということだ/それが ほんとうの<民主主義>だ」(『灯をともす言葉』)
▼来年四月の消費税率引き上げに合わせて実施する経済対策として、政府は法人税に上乗せしている復興特別法人税を一年前倒しして、二〇一三年度末に撤廃する方針だ。所得税への上乗せは残る
▼それだけではない。安倍晋三首相は法人税の実効税率を引き下げる強い意向を示し、経済界も「働く人に恩恵がある」と大歓迎だ
▼消費税を8%に上げた時の景気後退を懸念しデフレ脱却の流れを止めたくないとしても、あからさまな企業優遇策である。与党からも「国民の理解が得られない」と反発の声が出るのは当然だろう
▼庶民から集めた税金が企業の経営支援に回る本末転倒が起きてしまう。消費税増収分は社会保障に全額を充て、財政を立て直すはずではなかったのか。一九七八年に亡くなった花森さんの言葉だ。<なんだい/取り上げたゼニの この使いぶり/いったい ぼくらのゼニを/なんとおもっているのだ>
2013年9月24日天声人語(OCN*朝日新聞デジタル)
天声人語
▼だれかの人柄を言いあらわすときに、リベラルという言葉を使う場合がある。あの人はリベラルだ、というように。具体的にどんな人かは必ずしも一様ではない。自由を大切にする人、穏やかで公平な人……
▼政治の世界でもある種のシンボルとして使われてきた。保守陣営の向こうを張るリベラル勢力の結集を、といった具合だが、その中身についての腑(ふ)に落ちる説明はなかなか聞けない。言葉の意味を定めかねるうち立ち消えになってしまう
▼それが何であるかは言いにくくても、何でないかなら言える場合がある。在日の人々に向けられるヘイトスピーチ(憎悪表現)がリベラルな考えに相反することは明らかだろう。あの敵意と排外主義はおよそ人々の自由の尊重から遠い
▼もう憎しみをあおるのはやめよう。そんなデモがおととい、行われた。「差別撤廃 東京大行進」である。むき出しの民族蔑視に反対する約1200人が新宿の街を歩いた。性的少数者や障害者らへの差別もなくしていこうと訴えた
▼自分とは異質な存在を受け入れ、尊ぶ。寛容こそ、リベラルの核心のひとつだろう。日本は単一民族社会でもなければ一億一心の国でもない。〈我々はもう既に一緒に生きている〉。大行進が掲げたテーマに、その通りだとうなずく
▼思想史家の武田清子さんによれば、リベラルは〈生活感情や心情としても日常生活のふところの深みに育てられていなくてはならない〉。言葉遊びでなく、実践を通じてわがものにしたい。
2013年09月23日
今日のコラム
9月23日松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM)
永遠に消えないもの
高野山にはたくさんの墓があります。その中で一段と目立つ立派な墓は、おおむね大名の墓だそうですか、その大名の墓も、今日では無縁仏になっているものもあるということです。昔は相当の一家眷族を養い、しかも明治になってさらに華族として、財産も保護されるという状態が長く続いたにもかかわらず、そういう変化があったということを考えてみますと、人間のはかなさというものを身にしみて感じます。
やはり世の中というものは形ではない。いくら地位があり財産があっても、それはいつまでも続くものではない。結局、永遠に消えないものはその人の心であり、思想であり、この世で果たした業績である、そう思うのです。
筆洗
2013年9月22日筆洗(東京新聞TOKYOWeb)
▼不思議なことに秋の彼岸になると、気付かないうちに緋色(ひいろ)の花弁を押し合うように静かに佇(たたず)んでいる。どこまでも律義な花である。<西国の畦曼珠沙華(あぜまんじゅしゃげ)曼珠沙華>森澄雄
▼花だけが先に出て花が落ちてから葉が出る。忽然(こつぜん)と出現した感じがして、暗がりで出会うと、どきりとさせられる。九月の残暑が厳しかった昨年は開花がかなり遅れたが、今年はいつもの年のように秋の澄んだ空気を連れて来た
▼小説家の竹西寛子さんには広島第一高女時代、国語の授業で曼珠沙華を詠んだ俳句ばかり五句も七句もつくってくる同級生がいた。彼女は一年ぐらい後に原爆によって殺された。竹西さんは曼珠沙華を見て彼女を思わぬ日はないという(『俳句によまれた花』)
▼どこかに異国めいた妖しさがあり、死人(しびと)花、幽霊花などの別名もあるこの花は万葉の時代に食用のために中国から持ち込まれた帰化植物とされる。水にさらして根っこの有毒な成分を取り去ると、粘り気のあるでんぷんが飢饉(ききん)の備えとなった
▼<対岸の火として眺む曼珠沙華>能村登四郎。群生するこの花の姿を川向こうから見れば炎のように映るのかもしれない
▼晩夏からリズミカルな声を聞かせていたツクツクボウシは消え、鳴く虫たちの美しいハーモニーが秋の夜を彩る。この連休は、天候が大きく崩れる心配はなさそうだ。少し足を延ばしてみませんか。
2013年9月23日天声人語(OCN*朝日新聞デジタル)
天声人語
▼指揮者の故・岩城宏之さんはお元気だったころ、いわゆるデスマスクを作ったことがあったそうだ。それをかぶって、まったくの無表情で指揮をするという、テレビの企画のためだった
▼仰向けになって顔に枠をはめ、石膏(せっこう)を流して型をとる。顔全体が覆われていくと「この世から隔絶された恐ろしさ」を感じたと、体験を書き記している。かつて読んで記憶に残ったその一文を、「入棺(にゅうかん)体験が盛況」だという記事に思い出した。いわば、この世から隔絶される疑似体験である
▼自分らしく人生を終(しま)う準備をする「終活」が広まる中、忌避感は案外と薄いようだ。花で埋まる棺おけに入り、両手を胸で組む。白布団をかけてもらい、担当者がそっと蓋(ふた)をする
▼ひと月前の本紙東京版によれば、「終活フェスタ」と称する会場には、その入棺体験や散骨の相談、遺影の撮影など約40のブースが並んだ。生きているうちの旅支度を「縁起でもない」と嫌う時代では、もうないらしい
▼きょうは彼岸の中日、お墓参りの方も多かろう。見慣れた「〇〇家之墓」から、近ごろはユニークな墓石や碑銘が増えているという。家をめぐる考え方の変化や、個の尊重が背景にあるようだ
▼35年前、小紙が「わが墓碑銘」を募ったら傑作が集まった。ある会社員は「めざまし時計よ、さようなら」と寄せていた。当時の奇抜も、今なら「あの人らしい」と相成ろう。葬送も墓も世につれて変わる。大切なのは形より偲(しの)ぶ側の心なのは、変わりようがないが。
2013年09月22日
昨日のカープ 勝ちました
広島の前田健が高熱おして六回無失点 リーグ単独トップ15勝
優勝のかかった巨人に、セを代表するエースが立ちはだかった。広島の前田健が五回まで無安打投球。六回、先頭打者に右前打を許したが、8三振を奪って6回1安打無失点と強力打線を寄せ付けなかった。直球は最速147キロを計測し、変化球も低めに決まった。見ていた者は体調不良と気づかなかっただろう。
試合前、へんとう炎のため、38度以上の熱があった。登板回避も検討されたが「行きます」。登板前には「広島が勝つことだけ。今は一つでも順位が上に行けるように上を見てやっていきたい」と意気込んでいた。クライマックスシリーズ(CS)進出まであと一歩に迫った大事な試合で、マウンドを譲るわけにはいかなかった。当初は五回までの予定だったが、無安打投球が続いたため、六回まで登板。降板後は、病院へと直行した。
巨人の胴上げを阻止したエースの気迫の投球に「こいつはすごいなと思った」と野村監督。これでリーグ単独トップの15勝目。自身は7月14日のヤクルト戦(神宮)から9連勝となった。狙うは、球団初のCS進出。エースの意地をみた。(神田さやか)
◇セ・リーグ
巨人-広島21回戦(巨人12勝7敗2分、18時1分、東京ドーム、46176人)
広 島000403000-7
巨 人000000040-4
▽勝 前田健24試合15勝5敗
▽S ミコライオ52試合2勝4敗25S
▽敗 杉内24試合11勝6敗
▽本塁打 広瀬9号(3)(杉内)菊池10号(1)(杉内)梵6号(1)(杉内)ボウカー13号(3)(横山)
msn産経ニュースより
2013年09月22日
今日のコラム
9月22日松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM)
平和のための前提条件
平和が大切だということは、何千年も前から繰り返し唱えられているにもかかわらず、その一方では戦争をしている。はなはだしきは、平和のための闘争とか戦争といったことが口にされ、行なわれているというのが、過去、現在における人間の姿だと言えましょう。
それでは、そのような状態を脱却し、平和を実現する前提として、何が必要かというと、人間としての意識革命ではないかと思います。つまり、真の平和というものをはっきり見きわめ、心からそれを切望するというような一人ひとりの意識革命が、一国の政治の上にも教育の上にも醸成されていくならば、求めずして平和は生まれてくると思います。
筆洗
2013年9月21日筆洗(東京新聞TOKYOWeb)
▼日本では、一年で一人当たり年に六十キロほどの米を消費するという。では、この国で、一年間に捨てられる「まだ食べられる食品」は、一人当たりどのくらいだろうか。政府の推計では、これもまた六十キロほどだという
▼つまり、一年で大人一人の体重と同じくらいの重さの食べ物を、無駄にしている。貧しい国への食料援助の量は世界全体で四百万トンほど。この二倍近い食べ物が、日本では捨てられている。「もったいない」としか言いようがない現実だ
▼きょうから東京や名古屋で公開される映画『もったいない!』は、日本を含めた世界各国での食料廃棄の実態に迫ったドキュメンタリー映画だ。大きな箱の中にちょっと悪くなったものがあるだけで箱ごと捨てられる果物を見て、アフリカから欧州に移住した女性が、嘆く。「私の国では、高くてめったに食べられないものなのに…」
▼全世界で生産される食料の三分の一は捨てられている。今も十億人近くが飢えで苦しんでいるが、欧米の食品廃棄物は、そんな人々を三回救えるほどの量だという
▼食料生産には、膨大なエネルギーが費やされているから、世界の食品廃棄を半減させれば、自動車の数を半減させるほどの、温室効果ガスの抑制効果があるともいう
▼世界は、個人ではどうしようもないような矛盾や争いに満ちているが、食卓で取り組める問題もある。
2013年9月22日天声人語(OCN*朝日新聞デジタル)
天声人語
▼手紙を書くのに季節は無関係のはずだが、秋は人を、用もないのにその気にさせる。古くから、秋空に飛来する雁(かり)は懐かしい人の消息をもたらす使いとされてきた。〈九月(ながつき)のその初雁(はつかり)の使ひにも思ふ心は聞こえ来(こ)ぬかも〉と万葉集にもある
▼「雁の使い」とは手紙のこと。中国の漢代、匈奴(きょうど)に囚(とら)われた武将の蘇武(そぶ)が雁の足に手紙を結んで国に知らせた故事にちなむ。それから長い時が流れ、メールが瞬時に地球を巡る時代である
▼必然というべきか、手紙を書いたことのない若年者が増えているそうだ。郵便番号欄に電話番号を書くなど、基本を知らない小中学生が結構いる。去年の全国学力調査で、中3にはがきの宛名を書く問題が出され、正答率が74%だったと聞けば心配になってくる
▼危機感を募らせる日本郵便は近年、教材を作って小中学校へのサポートを始めた。昨年度は全国約7900校で、165万人が授業を受けた。昨今は、先生も手紙を書いた経験が少ないのが実情らしい。親御さんもしかりだろう
▼メールでは心がこもらないなどと言う気はない。ただ、古来、手紙は人間のあらゆる喜怒哀楽を媒介してきた。肉筆でつづる手紙には、電子時代にも失せない存在感と役割があると思う
▼そういえば石川啄木に、いかにも啄木らしい一首があったのを思い出す。〈誰(たれ)が見ても/われをなつかしくなるごとき/長き手紙を書きたき夕(ゆうべ)〉。やはり季節は秋だろうか。メールの一斉送信では、懐かしさの情も中ぐらいになる。
2013年09月21日
今日のコラム
9月21日松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM)
中小企業は社会の基盤
私は中小企業というものは、日本経済の基盤であり、根幹であると思う。それが健在であってこそ、大企業も持ち味を生かすことができるし、経済全体の繁栄も可能になる。とともに、中小企業は単に経済においてだけでなく、いわば社会生活の基盤にもなるべきものだと思う。つまり、いろいろな適性を持った人が、それぞれに色とりどりの花を咲かす、そういった社会の姿がより望ましいのであり、そこに人間生活の喜びというものもあるのではないだろうか。
その意味において、たくさんの中小企業が、それぞれにところを得て、さかんな活動をしているというような社会の姿が一番理想的なのではないかと思う。
筆洗
2013年9月20日筆洗(東京新聞TOKYOWeb)
▼安全保障に秘密は付き物だ。ロシアでエリツィン氏がプーチン氏に大統領の座を引き継ぐ時、核ミサイルのボタンの使い方を教えた。核大国の元首の重責をひしひしと感じている新大統領に、エリツィン氏はそっとささやいた。「実は、あのボタンは壊れている。これは最高機密だ」
▼ロシア流の小咄(こばなし)はともかく、確かに外交や軍事には他国に秘すべきことも多いだろう。しかし、秘密という言葉ほど、為政者にとって「不都合な真実」を覆い隠すのに便利な風呂敷はないというのも、事実だ
▼安倍政権が制定を目指す特定秘密保護法案は、政府に特大の風呂敷を与えるものではないか。何しろ何がこの法律で守るべき秘密かは、大臣らが決める。それが本当に秘密に値するかは、国会も裁判所も検証しようがない
▼そんな法案についての意見公募が、わずか十五日間で締め切られた。多くの法案は公募期間を三十日以上としているのに、こんな重要な法案に半分しかかけないというのは、どういうことなのだろう
▼ちなみに、秘密主義王国のソ連は、こんな傑作小咄も生んだ。…ある男が赤の広場で叫んだ。「ブレジネフ書記長は大ばかだっ」。男は逮捕され、裁判にかけられた。判決は、強制労働十一年。うち一年は名誉毀損(きそん)罪、残り十年は国家機密漏洩(ろうえい)罪として…
▼そういえば、特定秘密保護法案の最高刑も懲役十年だ。
2013年9月21日天声人語(OCN*朝日新聞デジタル)
天声人語
▼歌い手が録音に合わせて口だけ動かす。俗にいう「口パク」である。オバマ大統領の2期目の就任式で、歌手のビヨンセさんが披露した米国歌がそうだった。北京五輪の開会式での「天使の歌声」もそうだった。音楽業界では珍しくないらしいが、それが学校の入学式や卒業式という場であったらどうだろうか
▼大阪府教委が府立高校に通知を出した。式で君が代を斉唱する時、教職員が本当に歌っているかどうか、「目視」で確認せよ、と。去年、府立和泉高で校長が教員の口の動きを監視させ、物議を醸した。その校長が教育長になり、全校に広げる
▼式場で教頭らが目を光らせ、歌っていない者がいたら、名前を府教委に報告する。判断の基準は形式的な「口元チェック」ではなく、「公務員として誠意ある態度かどうか」だという。漠然とした話だ
▼例えば「感極まって歌えなかった」場合は目こぼしになるかも知れないという。そんなことまで考える情熱があるなら他のことに注いではと思う。自主性が大切と普段から説いてきた先生が、信念を封じて口パクをする。想像したくない光景だ
▼起立斉唱を義務づける条例がある以上、守るのは当然と考える人も少なくないだろう。だが、君が代をどう考えるか、歌うかどうかは個人の思想・良心の自由にかかわる。最高裁も去年の判決で教員へのいきすぎた処分に釘を刺している
▼先生がお互いに監視しあう。教育の場が荒廃しないか。多感な生徒の心に暗い影を落とさないか。
2013年09月20日
昨日のカープ 勝ちました
広島3-1阪神 広島が3連続勝ち越し
広島が3カード連続で勝ち越し。二回に梵の適時打で同点。七回には代打岩本の適時打で勝ち越し、菊池の犠飛で加点。バリントンが7回1失点で2季ぶりの10勝目。阪神は7カード連続負け越し。スタンリッジは2年連続の2桁黒星。
◇セ・リーグ
広島-阪神23回戦(阪神12勝11敗、18時、マツダスタジアム、24844人)
阪 神100000000-1
広 島01000020×-3
▽勝 バリントン27試合10勝9敗
▽S ミコライオ51試合2勝4敗24S
▽敗 スタンリッジ23試合8勝10敗
▽本塁打 坂2号(1)(バリントン)
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2013年09月20日
今日のコラム
9月20日松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM)
立ち話の会議
社長が実際の仕事についてあまり知らず、会議で「どうだ君、やれると思うのだがどうだ」というようなことを言っていると、甲論乙駁、議論百出となって、三日ぐらいもかかることになりかねません。それはいささか極端ですが、会議というものは概してそのような傾向が強いのではないでしょうか。それでは何かにつけてテンポの速い今日の世の中では、結論が出たときにはもう状況が変わっているということにもなりかねません。
ですから会議だからといって、会議室に集まり椅子に座ってするというのではなく、言うなれば立ち話で会議をして即決するというくらいの心構えが必要だと思います。
筆洗
2013年9月19日筆洗(東京新聞TOKYOWeb)
▼熱するのはたやすいが、冷たく保つのは、難しい。カッカしやすい頭もそうだが、科学技術の歴史もまたそうらしい
▼熱することに関しては、人類には五十万年の火を使ってきた長い経験がある。金属を高温で溶かす技も六千年前には手に入れていた。だが、氷点下をぐっと下回る低温を操る技を手にし始めたのは、わずか二百年ほど前のことらしい
▼炭酸ガスを冷やしドライアイスにするのに成功したのは十九世紀半ば。ヘリウムガスを液体にするのはとりわけ難しく、一九〇八年にオランダのカメルリーン・オンネス博士が成し遂げた
▼博士は、ようやくたどり着いた零下二六〇度以下の世界で、とてつもない発見をする。水銀の電気抵抗が突然、ゼロになったのだ。人類が超電導現象を目にした最初の瞬間であった(伊達宗行著『極限の科学』講談社)
▼泉下のオンネス博士も、日本の鉄道技術者の挑戦には、目を細めるであろう。液体ヘリウムと超電導磁石を使うリニア中央新幹線が、二〇二七年に開業しようというのだ。きのうJR東海は路線の具体案を発表し、着工に向け一歩を踏み進めた
▼超電導の発見から一世紀、旧国鉄がリニアの開発を始めて半世紀。九兆円を投じてのリニア建設は、五十年先、百年先をにらんだ技術力の継承と発展をも狙ってのことという。リニアの先にも、ずっと線路は続くのだろう。
2013年9月20日天声人語(OCN*朝日新聞デジタル)
天声人語
▼速さに慣れる習性は恐ろしいと思う〉という感想が真に迫る。鉄道紀行作家の故宮脇俊三(みやわきしゅんぞう)さんが東京―新大阪間に「のぞみ」が登場した時の試乗記を書いている。21年前だ。時速270キロに達した瞬間はスリルを感じたものの、たちまち〈それが当然のように思えてくる〉
▼最高時速が505キロになっても、やはりすぐに慣れて、のぞみなぞはまだるっこしいと感じるようになるのだろうか。品川―名古屋を約40分で結ぶリニア中央新幹線のルートや駅の場所などがわかってきた。14年後の開業をめざすが、7年後の東京五輪が決まり、せかす声が上がる
▼同じ鉄道の話題でも好対照なのが、JR九州の豪華寝台列車「ななつ星」だろう。欧州のオリエント急行にも匹敵する高級な客室やサービスが売りだ。来月15日から走りだす。博多から由布院、阿蘇、長崎といった観光地を巡っていく
▼リニアは名古屋まで1万1500円を想定。ななつ星は3泊4日、2人1室で最高113万2千円。かたや、スピードが節約してくれる時間を買い、こなた、快適な空間とそこで過ごす時間を買う
▼移動の手段に徹する前者に、移動じたいを目的として楽しむ後者。ななつ星をデザインした水戸岡鋭治(みとおかえいじ)さんの言葉がおもしろい。「鉄道は遅い旅を追求したことが一度もない。これからはいかに遅く、ゆったり走るかだ」(「大人の鉄道入門」)
▼予定通りの開業なら生きてリニアに乗れるかどうか。豪華列車には乗ってみたいが、手が届かない。
2013年09月19日
今日のコラム
仕事を味わう
私はどんな仕事であれ、ほんとうにそれが自分に適したものかどうかを見きわめるのは、それほど容易なことではない、仕事というものは、もっともっと深いというか、味わいのあるものだと思います。
最初はつまらないと思えた仕事でも、何年間かこれに取り組んでいるうちにだんだんと興味が湧いてくる。そしていままで知らなかった自分の適性というものが開発されてくる。
そういうことも仕事を進めてゆく過程て起こってくるものてす。つまり、仕事というものはやればやるほど味の出てくるもので、辛抱をして取り組んでいるうちに、だんだんと仕事の味、喜びといったものを見出していくことができるのだと思います。
筆洗
2013年9月18日筆洗(東京新聞TOKYOWeb)
▼あのしこ名が番付表から消えてしまうのはさみしい。秋場所前に引退した元大関の把瑠都だ。腕力を生かした豪快な取り口で大関に駆け上ったエストニアの怪人も左ひざのけがには勝てなかった
▼尾上(おのえ)部屋(東京都大田区)はご近所なので商店街で時々見かけた。一九八センチ、一八九キロの巨体は遠くからは岩が動いているように見えた。朝稽古では、現十両の里山と激しい三番稽古を繰り返していた場面が印象に残る
▼外国人力士第一号の高見山が入門したのは東京五輪が開かれた一九六四年。以来、慣れないちゃんこを口にし、厳しい稽古にも耐えた外国出身の力士は、日本人力士をねじ伏せ、横綱や大関を独占する
▼高見山が初土俵を踏んだその年、巨人の王貞治選手がつくった記録が年間五十五本塁打だ。その偉業が四十九年ぶりに破られた。ヤクルトのバレンティン選手は十五日、重圧をはねのけ、五十六、七号をたたき込んだ
▼衰えた元大リーガーが晩年に一稼ぎするひと昔前の助っ人とは違う。二十六歳で来日し、持ち前のパワーに加え、変化球をコーナーに投げ分ける投手に順応し、選球眼を磨いた。日本がバレンティン選手を育てたといえようか
▼ファンが記録更新を歓迎し、五十五号が「聖域」でなくなったのは成熟の証しだろう。大相撲では外国人横綱が何人も誕生している。相撲に見習うべきこともある。
2013年9月19日天声人語(OCN*朝日新聞デジタル)
天声人語
▼国会の古い議事録を読み返してみた。1975年の衆院予算委員会。約40年後のいま議論されていることが、当時から問題となっていたことがわかる
▼日本が他国から攻撃され、自衛隊と米軍の艦船が公海上でいっしょに行動している時、自衛艦が米艦を守ることはできるのか。当時の宮沢喜一外相は「共同作戦をしておって共同の艦船を守らないということは、普通常識的に考えればいかにも奇妙なこと」と答えた
▼8年後の同じ場でも同じ問いが出された。日本が武力攻撃を受け、助太刀に来た米艦もやられた。当時の中曽根康弘首相は「日本側がこれを救い出すことは、公海においても、憲法に違反しない個別的自衛権の範囲内である」と答弁した
▼安倍政権の有識者懇談会がおととい、集団的自衛権をめぐる議論を再開した。憲法解釈を変え、行使できるようにするという。公海上で米艦を守れるかどうかは、その焦点の一つだが、政府はずいぶん前から守れると解釈してきたわけだ
▼なにを今さらといいたいのではない。要は日本がまだ攻められていない段階でも米艦を助けられるようにしたいのだろう。だが、その場合の自衛隊の働きが、結果として米国の戦争に日本を巻き込むことにならないか。危ない選択である
▼9条の縛りを専門家の判断だけで解き放つわけにはいかない。平和主義は、国民主権や人権尊重とともに戦後日本の自由な暮らしを支えた土台でもある。そのことにも目を向けた国民的な議論が欠かせない。
2013年09月18日
今日のコラム
9月18日松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM)
豊かさに見合った厳しさ
暮らしが豊かになればなるほど、一方で厳しい鍛練が必要になってくる。つまり、貧しい家庭なら、生活そのものによって鍛えられるから親に厳しさがなくても、いたわりだけて十分、子どもは育つ。けれども豊かになった段階においては、精神的に非常に厳しいものを与えなければいけない。その豊かさにふさわしい厳しさがなければ、人間はそれだけ心身ともになまってくるわけである。
しかるに、いまの家庭にはそういう厳しさが足りない。政治の上にも、教育の上にも足りない。それが中学や高校の生徒がいろいろと不祥事件を起こしている一つの大きな原因になっているのではないだろうか。
筆洗
2013年9月17日筆洗(東京新聞TOKYOWeb)
▼きょう没後八十五年を迎える若山牧水には、生涯に残した七千首あまりの歌のうち酒を詠んだ歌が二百首はあるそうだ。酒を愛し、旅を愛した歌人は日本の隅々にまで足を延ばし、酒を飲んだ
▼<白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり>。この有名な歌の格調高さも魅力だが、<それほどにうまきかと人のとひたらばなんと答へむこの酒の味>も酒好きには格別である
▼朝二合、昼二合、夜六合の一日一升が定量。理由を見つけては飲み足すことも。四十三歳で亡くなる直前まで酒は絶やさず、体に染み込んだアルコール分で死後三日を過ぎても死臭や死斑が現れなかったという逸話もある
▼連休の秋の夜長、静かに酒を飲むという計画を諦めた人もいるだろう。愛知県豊橋市付近に上陸した大型の台風18号は列島を縦断した。交通網は寸断され、最大で約五十万人を対象に避難指示が出された
▼気象庁が大雨の特別警報を初めて出した京都、滋賀、福井の三府県では特に被害が激しかった。泥水につかる水田の映像を見ると、稲刈りが終わっていてほしい、と願わずにいられない
▼牧水の歌碑は全国に約三百基。自然災害が爪痕を残す土地を訪ねたこともあっただろう。<幾山河越えさり行かば寂しさの終(は)てなむ国ぞ今日(けふ)も旅ゆく>。旅の途中、度重なる災禍に再起する民の強さも見てきただろうか。
2013年9月18日天声人語(OCN*朝日新聞デジタル)
天声人語
▼クレタ人は皆うそつきだ」と、クレタ人Aが言った。Aの言葉が正しいとすると、Aもうそつきということになり、クレタ人が皆うそつきかどうかは真偽不明となる。よく知られたパラドックスである
▼これとは次元が違うが、話を聞くと似たような眩暈(めまい)を感じてしまう。安倍政権が準備する特定秘密保護法案である。「重要な秘密は漏らしてはならない。ただし、どれが重要で、どれが重要でないかは重要な秘密である」と言われているようだ
▼法案の概要を読むと、防衛、外交、スパイ、テロの4分野で、それぞれ「特定秘密」にできる項目を並べている。漏洩(ろうえい)は厳罰に処せられるのだが、書きぶりが抽象的かつ網羅的なので、なんでもかんでも秘密にされかねない怖さがある
▼米国との間で軍事情報などを共有する必要性が高まり、「保秘」の仕組みも万全にする必要があるということらしい。安全保障上、表に出せない情報はあるだろう。ただそれは、国民の知る権利、ひいては国民主権の原理とぶつかる関係にあることを忘れるわけにはいかない
▼なにが特定秘密かを決めるのは「行政機関の長」だ。その判断が適切かどうかを見張る仕組みが法案にはない。首相以下が恣意(しい)的に決めたり、乱用したりしたらどうなるか。国会や裁判所は歯止めをかけられないのか。危惧すべき問題点が多すぎる
▼民主主義を支えるのは情報公開である。それを蔑(ないがし)ろにして法成立に走るなら、「よらしむべし、知らしむべからず」ではないか。
2013年09月17日
昨日のカープ 勝ちましたよ
広島5-4巨人 広島、今季初の6連勝
広島が今季初の6連勝。1-1の八回1死二塁でキラの右前打が失策を誘い勝ち越し。エルドレッド、小窪の適時打などで3点を追加。早めの継投が的中し、横山は今季初勝利。巨人は前半3併殺打の拙攻で九回の反撃も及ばず3連敗。
セ・リーグ
広島-巨人20回戦(巨人12勝6敗2分、13時30分、マツダスタジアム、32053人)
巨 人000 010 003-4
広 島000 100 04×-5
▽勝 横山32試合1勝1敗
▽敗 山口58試合4勝3敗3S
▽本塁打 長野18号(1)(今井)